一汁三菜

自分が楽しいと思うこと、マラソン、旅行、その他日々の記録をしたい。

読了: 山野井泰史「アルピニズムと死 僕が登り続けてこられた理由」

重めの文庫を読むだけの体力と時間がこのところ無く、何を読んでも途中で挫折を繰り返しています。なので、軽めの新書に手を伸ばしてみました。

この本は、以前読んだ「垂直の記憶」の著者が書いた本です。「垂直の記憶」と内容的には被る部分もあるのだけれども、垂直の記憶で書かれているような主観的な文章からは離れて、客観的に自分の行動を振り返るような書きぶりになっています。

前作と比べて異なっているのは、「アルピニズムと死」のタイトルにもある通り、周りの登山家の死にも触れられているところ。具体的な死の表現は冒頭を除きあるわけではありませんが、過去に共にした登山家の死や行方不明はそこここに表れてきます。

とはいえ全体的に見てみれば「死」を主題に扱ったというわけではなく、むしろ自身の登頂失敗の回顧録といった趣が強くでています。登頂失敗を裏返してみれば、極限状態においても危険性を判断して撤退を決断したということです。ここが、なぜ危険度の高い登山方法を取りつつも難易度の高い山に挑んでいながら、今でも生きていることが出来ているかという主題につながっているのではないかと感じました。